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個別論点IFRS Part15:退職給付会計と年金数理人(2012/1/23)

退職給付会計は、IAS第19号「従業員給付」で規定されていますが、IFRSの中でもとりわけ難解で、不得手に感じている人も多いと思います。
会計の専門家である会計士でもやはり難しい分野だと言えるでしょう。
それは、退職給付会計のためには、年金数理計算が必要であり、会計の専門家である会計士とは別に、「年金数理人」という専門家が年金数理計算をするのですから、難解なはずです。

IAS第19号「従業員給付」は、国際会計基準審議会(IASB)が2011年6月16日に改訂し、公表しました。

数理計算上の差異はすべて即時認識するとか、財務費用(利息の純額)の計算に制度資産の期待収益率は使用しなくなりDBOの測定に用いた割引率を使用するなど、大きな変更があります。
特に、イールドカーブを利用した割引率の設定や、アセットシーリングに関する情報の開示(注記)など、会計監査人との協議だけでは決められない項目が多いと思います。

企業サイドも会計監査人も、最終的には「年金数理人」にIAS第19号で要求されている内容での処理や開示ができるかどうか、相談や協議をすることになるでしょう。

多くの課題は、個々の企業特有のものではなく、日本の「年金数理人」が標準的に対応してくれれば解決できるものだと思います。

それでは、「年金数理人」は、今回のIFRS対応についてどのように受け止めているでしょうか。
IFRS、とりわけIAS第19号の内容や改訂動向に対する理解や対応について、個人的にばらついているのか、日本で統一的に対応するよう考えられているのか、ということについては、強い関心を持つ人も多いでしょう。

「年金数理人」が加盟する組織は、「日本年金数理人会」です。
公認会計士の「日本公認会計士協会」に該当すると思われます。

「日本年金数理人会」は、JSCPAと呼ばれ、「日本公認会計士協会」がJICPAと呼ばれるのとよく似ています。

余談はさておき、JSCPAのサイトを見ると、JSCPAが退職給付会計に関連して様々な動きをしていることがわかります。

その中で、特に重要な意味があると思われるのは、以下の項目です。
@日本の会計基準制定プロセスに関わっている
AIASBの会計基準制定プロセスに関わっている
BIAS第19号適用実態を調査するために、欧州に調査団を派遣している

@とAのうち最近2年間の動きは、以下の4つです。
上の二つが@のASBJへのコメントで、下の二つがAのIASBへのコメントです。

09.04.01-01「退職給付会計の見直しに関する論点の整理」に対するコメント 10.05.31-01「退職給付に関する会計基準(案)」等に対するコメント 10.09.01-01IASBの公開草案に対するコメント 11.11.10-01IASBアジェンダ・コンサルテーション 2011に対するコメント

  ※以下のJSCPAのサイトより抜粋
   http://www.jscpa.or.jp/opinion/index.html

また、Bの調査に関する報告書も以下のJSCPAのサイトで公表されています。
http://www.jscpa.or.jp/library/index.htmlの「研究報告」の「国際会計基準(IAS19)の適用に関する海外調査と示唆」


Bの報告書を要約すると以下のようになります。
@ 調査時期:2010年9月
A 調査メンバー:生命保険会社、信託銀行および監査法人(トーマツ)の年金数理人
B 訪問国:イギリス、ドイツ、オランダ、スイスの4カ国
C 調査先:監査法人、事業会社、数理コンサルティング会
D 調査内容:50項目の質問リストをすべての調査先にインタビュー

この報告を見ると、現行(2011年の改訂前)のIAS第19号への対応について、各国でバラツキがあったり、割引率など企業が決定しなければならない項目について、実際にはアクチュアリー主導で決められていることなどがわかります。

これらのJSCPAの動きから私が強い関心を持ったのは、以下の点です。
@「年金数理人」は個々バラバラではなく、JSCPAとして組織的に対応している。
AJSCPAは会計基準に強い関心をもって対応を検討している。

したがって、皆さんが「年金数理人」と協議する際には、是非ここでご紹介した文書も参考にして対応されると、ピントの外れた質問や依頼を避けることができるでしょう。

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  Part27:J-IFRS(日本版IFRS)のねらい(2013/6/20)  
  Part28:IFRSの任意適用を拡大させる第一弾か?(2013/6/23)   
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中田版『IFRSの誤解』 
Part1:包括利益(2010/8/6)
Part2:連結の範囲 (2010/8/30)
Part3:棚卸資産会計(2010/9/27)
Part4:IFRS適用時期(2010/10/05)
Part5:海外子会社の機能通貨(2010/10/12)
Part6:収益認識(FOBとCIF)(2010/11/8)
Part7:初度適用と海外子会社のPL換算(2010/12/29)
Part8:IAS第16号の「一会計期間」は「一年」(2011/1/14)
Part9:海外子会社の機能通貨(その2)(2011/3/7)
Part10:子会社の会計方針の統一(2011/3/28)
Part11:IFRSは時価会計的でM&Aのためにある(2011/7/25)
Part12:IFRSは投資家にとっても役に立たない(2011/8/1)
  Part13:300万円ルールなどがないIFRSではすべてのリースがオンバランスになる(2014/2/24)   
  Part14:開示義務の明文規定がある場合には、すべて開示しなければならない(2014/5/9) 
 
勝手に解説『山田辰己理事のIASB会議レポート』
Part1:連結子会社の開示
 (2010/8/17)
Part2:概念フレームワーク
 (2010/8/23)
Part3:アメリカの動向(2011/8/23)
 
『グループ法人税制が与える連結決算への影響』
Part1:固定資産未実現に係る税効果の会計手続き(譲渡損益調整資産の取扱い)(2010/9/7)
Part2:連結法人間の寄附金に係る税効果の会計手続き
(2010/9/13)
Part3:中小特例の取扱い(2010/9/21)
 

『やさしく深掘り IFRSの概念フレームワーク』
『やさしく深掘り IFRSの有形固定資産』
『わかった気になるIFRS』
『連結経営管理の実務』
『内部統制のための連結決算業務プロセスの文書化』


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