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災害時の開示 PART3-5:三洋電機(有価証券報告書)(2011/3/29)

今回は、平成16年10月23日に発生した新潟県中越地震の際に、平成17年3月31日に終了する年次決算について三洋電機(株)が作成した有価証券報告書の開示の内容を解説したいと思います。

以下の開示例では災害に関連して、10か所に記載されています。

@ 第2【事業の状況】
  1【業績等の概要】
  (1)業績本文<第4段落>
   ⇒ 利益の減少要因の一つとして記載されています。

A 第2【事業の状況】
  1【業績等の概要】
  (1)業績の「事業の種類別セグメント」のBコンポーネント部門
   ⇒ 売上の減少要因の一つとして記載されています。

B 第2【事業の状況】
  3【対処すべき課題】<第5段落>
   ⇒ 被災した事業の復興を課題としてあげています。

C 第2【事業の状況】
  7【財政状態及び経営成績の分析】
  (1)経営成績に重要な影響を与える要因について分析
  @当年度の概況<第4段落>
   ⇒ 大幅な損失計上の要因の一つとして記載されています。

D 第2【事業の状況】
  7【財政状態及び経営成績の分析】
  (1)経営成績に重要な影響を与える要因について分析
  @当年度の概況<第6段落>
   ⇒ 利益の減少要因の一つとして記載されています。
     なお、新潟三洋電子鰍フ地震損失として423億円を営業外費用に
     計上したことが明記されています。

E 第2【事業の状況】
  7【財政状態及び経営成績の分析】
  (1)経営成績に重要な影響を与える要因について分析
  C経営成績の状況
  <売上高及び営業収益><第3段落>
   ⇒ コンポーネント部門の減少要因の一つとして記載されています。

F 第2【事業の状況】
  7【財政状態及び経営成績の分析】
  (1)経営成績に重要な影響を与える要因について分析
  C経営成績の状況
  <営業外収益(費用)、当期純利益><第1段落>
   ⇒ 地震損失を営業外損失として423億円を計上したことが明記されています。

G 第4【提出会社の状況】
  6【コーポレート・ガバナンスの状況】
  (2)コーポレート・ガバナンスに関する施策の実施状況
  B会社のコーポレート・ガバナンスの充実に向けた取組みの実施状況
  (3番目)リスク管理体制強化の状況
   ⇒ リスク管理体制の一層の強化を図ったことが明記されています。

H 第5【経理の状況】
  1【連結財務諸表等】
  (1)【連結財務諸表】
  A【連結損益計算書】
   ⇒ 「X 営業外費用」の「5.地震災害損失」として、「42,373(百万円)」が
     計上されています。

I 第5【経理の状況】
  1【連結財務諸表等】
  (連結財務諸表注記)
  20.連結損益計算書及び連結キャッシュ・フロー計算書の補足情報
   ⇒ 地震災害損失の主な内容を記載しています。

以下が、実際の開示内容になります。

======================================
  三洋電機株式会社 有価証券報告書
  第81期(自 平成16年4月1日 至 平成17年3月31日)

第2【事業の状況】
  1【業績等の概要】
    (1)業績 <第4段落>
当年度の連結業績は順調な個人需要に支えられた携帯電話などの売上が増加した一方、競争激化や価格下落の影響でデジタルカメラなどの売上が減少し、連結売上高は前年比0.9%減少の2,484,639百万円となり、その他の営業収益は前年比10.9%増加の101,947百万円となった。利益面では販売価格の下落や原材料価格高騰、及び新潟県中越地震の影響による半導体の売上減少などにより営業利益は前年比55.7%減少の42,316百万円、税金等調整前当期純利益は64,991百万円の損失、繰延税金資産の回収可能性を厳格に判断し、その一部を取り崩した結果、当期純利益は171,544百万円の損失となった。

(中略)

Bコンポーネント部門
電動工具向けのニカド電池の売上は米国住宅市場が好調に推移したことで大きく増加し、太陽電池も環境意識の高い欧州市場を中心に大幅に増加した。しかしながら新潟県中越地震の影響により半導体の売上が減少した。また、液晶事業について、平成16年10月1日にセイコーエプソン鰍ニ合弁で三洋エプソンイメージングデバイス鰍設立し、持分法を適用したことから売上の減少要因となった。
この結果、当部門の売上高は前年比3.9%減少の984,387百万円、営業利益は前年比68.5%減少の18,196百万円となった。


第2【事業の状況】
   3【対処すべき課題】<第5段落>
こうした新経営システムの下、新潟県中越地震で被災した半導体事業の復興のみならず、経営陣についても刷新を図り、厳しい経営環境からの復活と進化の実現に挑戦していく。そのためには、これまで培ってきた経営資源を最大限に活用しながら、当社グループ全体の構造改革を敢行し、有利子負債削減など財務体質の健全化ならびに成長できる事業構成への変革を一層加速していく。


第2【事業の状況】
  7【財政状態及び経営成績の分析】
   (1)経営成績に重要な影響を与える要因について分析
    @当年度の概況<第4段落以降>
さらに、平成16年10月23日に発生した新潟県中越地震により、当社グループの半導体主力製造拠点の1つである新潟三洋電子鰍ェ被災したため、半導体事業を中心に大幅な損失を計上するに至った。
当年度の売上高は、コマーシャル部門とその他部門が伸張したもののコンシューマ部門及びコンポーネント部門が減少したため、2兆4,846億円と前年度比0.9%の減収となった。なお、クレジット事業などで構成される、その他の営業収益は1,019億円と前年度比10.9%の増加となった。
利益面では、販売価格の下落や原材料価格の高騰、及び新潟県中越地震の影響による半導体の売上減少などにより、営業利益は前年度比55.7%減少の423億円となり、税金等調整前利益は、新潟三洋電子鰍フ地震損失として423億円を営業外費用に計上したことなどにより、649億円の損失となった。これに加え、繰延税金資産の回収可能性を厳格に判断した結果、その一部を取り崩したため、当期純利益は1,715億円の損失となった。


第2【事業の状況】
  7【財政状態及び経営成績の分析】
   経営成績に重要な影響を与える要因について分析
     C経営成績の状況
      <売上高及び営業収益><第3段落>
コンポーネント部門においては、電池では、ニカド電池やリチウムイオン電池の売上が引き続き堅調に推移し、太陽電池も需要の伸びが大きく、電池全体の売上は増加したものの、新潟県中越地震により半導体主力製造拠点の1つである新潟三洋電子鰍ェ被災した影響で半導体の売上が大きく減少したため、当部門の売上高は 9,464億円で、前年度比 3.9%の減少となった。

第2【事業の状況】
  7【財政状態及び経営成績の分析】
    経営成績に重要な影響を与える要因について分析
      C経営成績の状況
        <営業外収益(費用)、当期純利益><第1段落>
当年度の営業外損益は、△1,073億円となり、前年度比577億円悪化した。これは、新潟三洋電子鰍フ地震に伴う固定資産処分損、棚卸資産処分損、修繕費等復旧費用等を、地震損失として合計423億円を計上したことなどによるものである。
以上により、税金等調整前当期純利益は△649億円(前年度は459億円)となった。法人税等の額は、繰延税金資産の回収可能性を厳格に見直した結果、その一部を取り崩したため、1,067億円(前年度は285億円)となった。

第2【事業の状況】
  6【コーポレート・ガバナンスの状況】
    (2)コーポレート・ガバナンスに関する施策の実施状況
      B会社のコーポレート・ガバナンスの充実に向けた取組みの実施状況
       ・リスク管理体制強化の状況
グループのリスク管理を統括する基本規定である「リスク管理推進規定」を制定し、リスク管理の強化策を明文化すると共に、緊急事態が発生した場合、組織機能を維持し、会社の信用維持のため、早期復旧できるよう対処すべき基本事項を同規定の中に一元的に取り纏め、代表的なリスクについて、緊急事態発生時の具体的な対応体制が機能するよう行動手順を定めて、危機管理体制の強化を図っている。
平成16年10月、新潟県中越地震発生時において、上記の規定に基づき、現地及び全社に対策本部を設置し、情報収集や救援策など迅速な対応を行うとともに、リスク管理体制の一層の強化を図った。


第5【経理の状況】
  1【連結財務諸表等】
    (連結財務諸表注記)
      20.連結損益計算書及び連結キャッシュ・フロー計算書の補足情報
地震災害損失
 地震災害損失には、新潟三洋電子鰍フ様々な損失と費用を含む。その連結子会社は、当社の主要な半導体前工程の会社の一つであるが、平成16年10月23日に発生した一連の新潟県中越地震で、重大な損害を受けた。
 その損失及び費用の内訳は次のとおりである。 



修繕費等復旧費用のうち主なものは、機械やユーティリティーの修繕費用で、その金額は14,200百万円である。

======================================
以上です。

なお、本コラム「カレント・トピックス」のPART3-1から3-6で取り上げた、三洋電機株式会社の開示資料は、以下のURLで閲覧できます。
http://sanyo.com/ir/jp/library/financialreports.html

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Part1:災害時の決算処理(2011/3/18)
Part2:特定非常災害特別措置法(2011/3/28)
Part3-1:三洋電機(適時開示−地震発生から2日後)(2011/3/29)
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Part3-3:三洋電機(半期報告書:後発事象)(2011/3/29)
Part3-4:三洋電機(四半期決算短信)(2011/3/29)
Part3-5:三洋電機(有価証券報告書)(2011/3/29)
Part3-6:三洋電機(招集通知)(2011/3/29)
Part4:後発事象の開示事例集(2011/3/30)
Part5:法務省「定時株主総会の開催の延期」について(2011/3/30)
Part6:有価証券報告書での開示事例集(2011/4/1)
Part7:東日本大震災に関する有報での開示事例集(2011/4/4)
Part8:協会会長通牒にある『阪神・淡路大震災に係る災害損失の会計処理及び表示について』(2011/4/6)
Part9:東日本大震災の四半期報告書での開示事例集(2011/4/13)
Part10:国税庁の「災害に関する法人税、消費税及び源泉所得税の取扱いFAQ」(2011/4/18)
Part11:国税庁の法令解釈通達「東日本大震災に関する諸費用の法人税の取扱いについて」と質疑応答事例(2011/4/22)
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  Part32:自民党・日本経済再生本部の「日本再生ビジョン」におけるIFRSの記載(2014/6/5)
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  Part37:連結決算短信での「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の記載状況(2015/6/9)   
  Part38:IFRS適用の対応コスト(2015/6/9)     
  Part39:4つの会計基準収斂の方向性(2015/6/9)  
  Part40:IFRS財団は日本の現状をどう見ているか(2015/7/28)   
  Part41:丸紅の初度適用(短信からの初度適用)(2015/9/8)   
  Part42:単体財務諸表へのIFRS任意適用の動き(2016/9/9)
  Part43:米国基準を適用している企業の動き(2017/3/15)
  
中田版『IFRSの誤解』 
Part1:包括利益(2010/8/6)
Part2:連結の範囲 (2010/8/30)
Part3:棚卸資産会計(2010/9/27)
Part4:IFRS適用時期(2010/10/05)
Part5:海外子会社の機能通貨(2010/10/12)
Part6:収益認識(FOBとCIF)(2010/11/8)
Part7:初度適用と海外子会社のPL換算(2010/12/29)
Part8:IAS第16号の「一会計期間」は「一年」(2011/1/14)
Part9:海外子会社の機能通貨(その2)(2011/3/7)
Part10:子会社の会計方針の統一(2011/3/28)
Part11:IFRSは時価会計的でM&Aのためにある(2011/7/25)
Part12:IFRSは投資家にとっても役に立たない(2011/8/1)
  Part13:300万円ルールなどがないIFRSではすべてのリースがオンバランスになる(2014/2/24)   
  Part14:開示義務の明文規定がある場合には、すべて開示しなければならない(2014/5/9) 
 
勝手に解説『山田辰己理事のIASB会議レポート』
Part1:連結子会社の開示
 (2010/8/17)
Part2:概念フレームワーク
 (2010/8/23)
Part3:アメリカの動向(2011/8/23)
 
『グループ法人税制が与える連結決算への影響』
Part1:固定資産未実現に係る税効果の会計手続き(譲渡損益調整資産の取扱い)(2010/9/7)
Part2:連結法人間の寄附金に係る税効果の会計手続き
(2010/9/13)
Part3:中小特例の取扱い(2010/9/21)
 

『やさしく深掘り IFRSの概念フレームワーク』
『やさしく深掘り IFRSの有形固定資産』
『わかった気になるIFRS』
『連結経営管理の実務』
『内部統制のための連結決算業務プロセスの文書化』


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